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ゲンキー記 ・ ジムトーランス

銀行時代に親しくつきあったカナダ人が三人いる。元銀行員のジェイ・モートン、元弁護士のジム・トーランス、今でも弁護士のジョン・クレイグ。モートンは故人。

ほかにも知っているカナダ人がいないというのではないのだが、呼べば答える木霊のようなのはこの三人である。

三人と面と向かって話すときはこちらの流儀に従って、ジェイ、ジム、ジョンとファーストネームを呼ぶが、そうでないときはファミリーネームと共に思っている。


おのまは留学したころからカナダ人にファーストネームではなくファミリーネームで呼んでくれと頼んできた。ファーストネームや英語式の愛称で呼ばれると人格が歪むような気がしてならない。

七月の中旬はゲンキーのことで気が滅入っていた。どうすればゲンキーを助けられるのだろうか。自分はどうあるべきなのだろうか。

胸水の穿刺をはじめ、ゲンキーの治療費は高かった。一回の治療で500ドルから1000ドルかかった。はじめのうちはずいぶん高いものだと病院にいくたびに思ったのだが、或る日、ゲンキーの治療にとりあえず二万ドルまで使うと決めた。二万ドルを使いきったら又考える。支払いの度に高いなと思うことがなくなった。

しかし、ゲンキーは肩身の狭い思いをしているかもしれない。ときどき小鳥やねずみをお土産にもってくる位だ、自分のために出費が生じていることを分かっているかもしれない。

ゲンキーだけの為に金を使っていてはいけない。おのま自身にも使ってバランスをとるのが良い。

ショーネシーゴルフで新しいアイアンセットを買うことにした。八百ドル。

十日ほどたって受け取ったピンのシャフトに貼ったラベルに Masa Ono とあった。

これは私の名前ではない、私の愛称でもないと言って返した。ショーネシーのスタッフたちはミスターオノと呼びかけてくるが、蔭ではマサと呼んでいるのだろうか・・・


亡くなったジェイ・モートンもそうだったがジム・トーランスはおのまのことを「おの」と呼ぶ。モートンもトーランスもおのまより十歳以上年上である。あの世代は、シャーロックホームズたちのようにファミリーネームで呼び合うことに抵抗感がないのかもしれない。

おのまと同い年のジョン・クレイグも「おの」と言っていたが、いつのまにか「おのさん」になってしまった。ジョン・クレイグはたくさんの日本人とつきあっているから、ひとりだけに「さん」をつけないことに抵抗があるのかもしれない。「おのさん」といわれると、こちらも「ジョンさん」とか「ジョン様」とかいいたくなる。


ジム・トーランスは数十年かけてオンタリオ州のモノという場所に自前のゴルフ場をつくった。

おのまが初めて回ったのは二十五年前で、その頃は3ホールしかなかった。ティーグラウンドやピンの位置を変えてひとつのホールを三様にし、3ホールを三回まわった。

おのまがトロントにいるあいだにモノヒルズ・ゴルフは3ホールから6ホール、そして9ホールになった。継続は力なりの好例である。


八月十四日の朝、トーランスに電話をかけ、次の週、トロントに行くのでモノヒルズでプレイできるかどうかを訊いた。

トーランスはゲンキーがいなくなったことを知っていた。共通の知人から電話があって、その時に聞いた由。トーランスも知人もゲンキーという名前は知らない。


ジム・トーランスはリューマチの気があっていつも体の痛みに耐えている。痛みに逆らわないためか坦々と話す。顔の表情から喜怒哀楽が読み取れない。変わらない表情のままときどき冗談を言うから気をつけて聴いていないと笑うタイミングを外す。

二年前にモノヒルズでゴルフをしたあと、今度はクミコと一緒に来いというので、猫がいるから二人が一緒に留守することはできないと答えたところ間髪をいれずその猫を殺せと言った。

初めてモノヒルズを回ったときのことだと思うのだが、ゴルフにある池や川の美しさを褒めたところ、ジムはそれらは元々あったものだ、ビーバーが出てくると言った。ビーバーが出てくるなんて素敵だねと言ったら、ビーバーはゴルフ場を荒らすから見つけたら殺すと云ってのけた。

なんと乱暴なことをすることかと思ったが、考えてみればそういう乱暴な所業は人間の習性であって、だから東京に住む人の多くはゴミ袋を破るからといってカラスを憎んでいるそうな。

そういう下地があったから、ゲンキーを殺せといわれたときは一瞬驚いたのだが、それはジム・トーランス一流の冗談であるとはすぐに分かった。


二年前の冗談を覚えているに違いないジム・トーランスに、深刻ぶらないように話そうと思いつつ、わがやの猫はお向かいの家から貰った猫だが、母猫や叔父猫もさいごは家に戻ってこなかった、猫は死期を悟るとどこかに行くという話しがあると言うと、トーランスは、猫だけじゃない、我が家の犬も弱ったあといずこともなく消えたと言った。

そうなのか犬も消えるものなのかと言いながら、ジム・トーランスがどんな犬を亡くしたのだろうか知りたかった。訊くほど粗雑ではない。起伏に富んだモノヒルズのどこかに大型犬が隠れて行く様を思った。


二年ぶりにまわったモノ・ヒルズは美しかった。ことにティーグラウンドは他のゴルフ場で見たことのないような美しさであった。フェアウェイにはディボット痕がほとんどなかった。モノヒルズのメンバーは十人しかいない。

シャフトに Masaharu Ono と書いてあるラベルが貼られたアイアンでフェアウェイを傷つけないようにして回った。新しいアイアンにはまだなじんでいない。

モノヒルズのサイトをみたら会員数が十人から十三人に増えていた。三人の会員を募っている。

http://monohillscc.com/index.htm

モノ・ヒルズのどこかで眠りについたトーランスの犬、小野小道と加納川の間の森の中のどこかで眠りについたおのまの猫が羨ましいと、今おのまは思っている。
| おのまのプロフィール | 猫ゲンキー  | 00:17 | comments(0) | trackbacks(0) |
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