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沖縄考 10 豊見城の丘にて


沖縄、豊見城(とみぐすく)の丘。

モモタマナ・桃玉菜をあとにして道なりにあるいていくと「慰霊の広場」に導かれる。



「海軍戦没者慰霊之塔」が見えてくる。




司令壕を根城にした戦いはかんばしからず軍人たちが壕の中で自決している。

そのひとり、大田実少将(死後中将)が自決する直前の6月6日に海軍次官宛てに発信した電報は広く知られている。沖縄県民がこうむった惨状に報いて欲しいという趣旨が胸をうつのである。

糧食六月一杯ヲ支フルノミナリト謂フ 
沖縄県民斯く戦ヘリ
県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ

電報の全文を碑にしてあった。





碑から右手にまわり石段に昇ろうとしたら塔のうしろに木がみえた。



ファインダーからこの風景をみてシャッターを切るとふいに目から涙がこぼれた。そして声が聞こえた。あのとき、僕はここで起きていたことを知らなかったんだよ。

僕とは誰?・・・

あのときっていつ?・・・


どうやら1945年初夏の自分の声らしい。

僕は三歳、満州にいて家族と共にふつうの暮らしをしていたのだと思う。

一家が満州からの逃避を始めたのは戦争が終わり、ソ連兵が満蒙国境を越えて何日もたってからである。我が家に闖入(ちんにゅう)したソ連兵をはっきり覚えている。政府や軍の関係者たちの多くはとっくの昔に逃げていた。原発事故が起きたのに逃げられなかった人たちと同じ構造があった。


あのとき、僕はここで起きていたことを知らなかったんだよ、という声はそれっきりだった。

石段を登りながら冷静になろうとしたが涙は止まらず、鼻水が出てきて、やがて嗚咽が始まったのには驚いた。

石段をあがったところに人がいないのを幸い、「僕」におもいきり声をださせ、泣かせてしまおうかと思ったが、石段に近づいてくる人影がみえたので懸命に抑えた。


どうしてそういうことになったのか分からない。

六十数年前に起きた沖縄の惨劇がなんたるものかは書物で知っているからいまさら泣くことなどない筈である。

六十数年前の自分が満州からはるか彼方にある沖縄で起きていることを知らなかったことだって泣く必要はないだろう。

そう思うのだが、あるいは違うのかもしれない。今この瞬間、世界のどこかで起きている惨劇や悲劇を、今の自分が知らないでいるということは大いに悲しむべきことなのかもしれない。

ニンゲンの無知、無力が罪の源泉であることを知っている木々のスピリットに感応したのかもしれない。ニンゲンは哀れなものよのう。

ここまで書いて、あのときの僕は・・・という声がする直前、七十にしてようやくここに来たという思いが浮かんだことを思い出した。


涙を袖でぬぐいながら撮った写真:






大木に 霊宿るらし 豊見城
たいぼくに れいやどるらし とみぐすく

232

電文の全文

 海軍次官宛の電報 [編集]

発 沖縄根拠地隊司令官

宛 海軍次官

左ノ電□□次官ニ御通報方取計ヲ得度

沖縄県民ノ実情ニ関シテハ県知事ヨリ報告セラルベキモ県ニハ既ニ通信力ナク三二軍司令部又通信ノ余力ナシト認メラルルニ付本職県知事ノ依頼ヲ受ケタルニ非ザレドモ現状ヲ看過スルニ忍ビズ之ニ代ツテ緊急御通知申上グ

沖縄島ニ敵攻略ヲ開始以来陸海軍方面防衛戦闘ニ専念シ県民ニ関シテハ殆ド顧ミルニ暇ナカリキ

然レドモ本職ノ知レル範囲ニ於テハ県民ハ青壮年ノ全部ヲ防衛召集ニ捧ゲ残ル老幼婦女子ノミガ相次グ砲爆撃ニ家屋ト家財ノ全部ヲ焼却セラレ僅ニ身ヲ以テ軍ノ作戦ニ差支ナキ場所ノ小防空壕ニ避難尚砲爆撃ノガレ□中風雨ニ曝サレツツ乏シキ生活ニ甘ンジアリタリ

而モ若キ婦人ハ卒先軍ニ身ヲ捧ゲ看護婦烹炊婦ハ元ヨリ砲弾運ビ挺身切込隊スラ申出ルモノアリ

所詮敵来リナバ老人子供ハ殺サルベク婦女子ハ後方ニ運ビ去ラレテ毒牙ニ供セラルベシトテ親子生別レ娘ヲ軍衛門ニ捨ツル親アリ

看護婦ニ至リテハ軍移動ニ際シ衛生兵既ニ出発シ身寄無キ重傷者ヲ助ケテ敢テ真面目ニシテ一時ノ感情ニ馳セラレタルモノトハ思ハレズ

更ニ軍ニ於テ作戦ノ大転換アルヤ夜ノ中ニ遥ニ遠隔地方ノ住居地区ヲ指定セラレ輸送力皆無ノ者黙々トシテ雨中ヲ移動スルアリ

是ヲ要スルニ陸海軍部隊沖縄ニ進駐以来終止一貫勤労奉仕物資節約ヲ強要セラレツツ(一部ハ兎角ノ悪評ナキニシモアラザルモ)只々日本人トシテノ御奉公ノ護ヲ胸ニ抱キツツ遂ニ□□□□与ヘ□コトナクシテ本戦闘ノ末期ト沖縄島ハ実情形□一木一草焦土ト化セン

糧食六月一杯ヲ支フルノミナリト謂フ

沖縄県民斯ク戦ヘリ

県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ

  • 文中の□部分は不明
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