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七月二十九日(金)朝。


左のほうで誰かが起き上がる気配がしたのでみると弟だった。

 四歳になる弟は脊髄カリエスという病気に罹っており背骨が曲がらないようにするため上半身をギブスでかためられていた。寝たきりで自分で起き上がることはできないはずなのにどうやって起きたのだろう。

立ち上がった弟の上半身にギブスはなかった。あれ、ギブスを外しちゃいけなんじゃないの、寝ていないとだめじゃないのと声をかけたが弟はこちらを見ようともせず壁に向かって静かに立っていた。

つるつるに剃りあげられた弟の頭はまんまるくて、まるでマルコメ味噌の宣伝にでてくる子供のように可愛かった。とても穏やかな表情をみていると、それは可愛いというより神々しいといった方がよいのかもしれないと思った。どこからか光が差し込んでいるらしく弟の体は輝いていた。輝いている弟がそのまま前にある壁に映っていた。鏡でもない壁に映るなんてちょっと気味が悪いねと口に出したところで目がさめた。


横浜に住んでいる知人の家はとても大きくて学校ほどもある。居間はまるで体育館のように広く、そこここに知人の友人たちがつどっていた。居間のあちこちに碁盤が置いてあった。囲碁大会を開いているのかもしれない。

知人に挨拶をしてから帰ろうと思い居間を通り抜けた部屋に行ったが知人がいなかったのでもとの居間を通って出ることにした。居間を通り抜けようとしたら右のほうにある碁盤の前に弟が座っているのが見えた。誰かと打っているようである。

へえ、いつのまに碁をやるようになったのだろうかと思いながら通りすぎたのだが、いや、まてよ、弟はこないだ死んだばかりではないか、いやだな、昼間から幽霊をみちゃったかな、それとも他人の空似というやつだろうか。

まあ、他人の空似だろうと、そのまま振り向かないで立ち去ろうと思ったのだが、いや、こういうときはきちんと見なければいけないと思い直し、元きたほうに二、三歩もどって目をしっかり開けた。

それはやはり弟であった。碁の相手は高段者らしく、ここはこういう風に打つのがよいと弟に教えていた。教えている内容からして弟もかなりの上級者だと分かった。兄とはいえ弟について知らないことはたくさんあるものだと思いながらなおも良く見ると、弟はいつもの小さい体だったが背は曲がっていなかった。

ああ、彼の背中は直ったんだ、良かったなあと思うと嬉しくて涙があふれてきた。涙はとまらず、そのうち嗚咽がはじまり、ついには大きな声で泣き出してしまった。物心がついてから声を出して泣いたことなどなかったのでびっくりしたところで目が覚めた。

号泣の気分は残っていたが目から涙は出ていなかった。 


七月五日、風呂に入っているときに日本から電話があったのは弟が急死したという知らせであった。

現世のほかに来世なるものがあるのかどうかは知らないが、そして子供の頃に障害を負った弟の現世がつらいだけの現世であったとは思わないが、もし来世があるというのであれば、光輝く幼い姿、あるいは身体的な障害のない壮年の姿で弟が来世に生まれ変わったことを祈る。
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