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伝聞・日本の岐路の景色
日本が破滅の道を進んだのは運命のさだめによるものではなく、人為的ミスだったということは昨日の日記に引用した永野護の論で理解できたと思うのですが、日本がふたたび破滅の道へ向かっているような気がするので多少しつこく書いておくほうが良いだろうと思い補足することにします

記録に残っている当時の光景をご紹介するのですが、そこにあるのは岐路に立った時に状況を分析することなく、論理的な思考をすることなく、いさましく足を踏み出していくオバカなオジンたちの群像です。それをみればオノマが田母神論文を推せない理由も理解できると思います



日本は日清戦争(1894)日露戦争(1904)第一次大戦(1914)と十年ごとに戦争で勝っています。それぞれの戦争は比較的短期で終わり、俗な損得勘定なら得が多かったといえます

ところが1931年に満州事変が始まると日本はのちに「十五年戦争」とよばれる長期戦争にのめりこんでいき、ついには一国で欧米諸国を相手に戦ってすってんてんになります

ビギナーズ・ラックだったことに気がつかないまま、多少儲けさせてもらったものだから気が大きくなり、大きく儲けるぞとばかりイカサマ相場にのめりこんで破滅するシロート衆と似ています

日本は一国で戦ったのじゃない、日独伊三国同盟があったと言われるかたがおられましょうが、あの同盟、実際には日本の戦争でなんの役にもたっていません。今の日米同盟も同じ。朝鮮と対抗するためにブッシュ戦争を応援すると言った人がいますが、ブッシュは拉致事件が解決していないうちにさっさと朝鮮の要求に応じました


まずはこれをお読みください

ある論文の一部の要点です:

日本の生命線は満蒙である
生命線とは柔道のやわら、すなわち急所
やわらに致命的打撃を受ければ、国家はその国家的存立を全うすることはできない
英国の生命線はエジプトである
エジプトが他国の手に落ちたら印度、豪州、カナダは英国から離脱する
この場合英国は国家的存立を主張することはできない



これを論文と呼んでいいのか迷います。満蒙が大事だと言っているのですが、ではその満蒙をどうしたいのかという具体的な提案は書かれていません

論文たりがたい欠陥はこういうところにもあります:

どうして満蒙が日本の国家的存立がかかっている急所なのかという説明がありません

どうして満蒙をエジプトになぞらえるのかという説明がありません

どうしてエジプトを失うと英国が国家的存立を失うのかという説明がありません

今日現在、エジプトはもとより印度、豪州、カナダも独立していますが英国は国家として存立していますよね

国家的存立ってどういうことを意味するのですか


「ともかく、一意専心、満蒙に向かって日本は努力を傾注すればよい。そのために、北支において匪賊どもが騒ぐ場合のみ、やむを得ず実力行使に出ていればよい」

緻密な論理、具体的な行動案が欠如しています。 冗長で、センチメンタルで、とりとめのない駄文、悪文、雑文

「ともかく」ということばが書いてある文章の多くは論理が欠けています。論理性に欠けていることを見破られたくない方は「ともかく」ということばを頭の中から追い出しておくといいです

でもこういう文章に抵抗を感じない方は多いでしょうね。朝日、産経のコラムはこういう調子で書かれることが多いです。某外交官OBのブログもそういう文のオンパレードです

オノマだってそういうのあるぜ。これってもしかしてオノマの創作じゃねーの

違います。銀行員がこういう文章でもって融資申請書を書いたら担当から外されます。「満蒙は柔道のやわらだ。よって一億円貸しましょう」ではだめ。どうしてやわらなのかという説明がないと通りません。そんなに貸したいのなら自分のポケットマネーでやりなさい

石原銀行が破綻したときは驚かなかったよ。石原慎太郎の粗雑な思考、言動でもって銀行経営はできないと分かっていたから。と敢えて脱線してみる

ご紹介した「論文」は1933年8月に松岡洋右(まつおかようすけ)という外交官が書いたものです

この年、日本の代表として国際連盟に出席し、満州問題を論じたものの42対1(棄権1)で完敗して逆上し「さようなら」といって退場(連盟脱退)した松岡は1940年、近衛内閣の外務大臣になり三国同盟の立役者となります

松岡閣下は「一意専心」ということばが好きだったようで、こうも書いています

「これからは一意専心、満蒙のために仕事をして他事に心を奪われないことである。」

そんなこと言われたって乗れねえよ。それってオレオレサギと同じじゃん。なんでそうしないといけないかというのを説明してくり・・


もうひとつだけお読みください。松岡センチメンタル論文の二年前、1931年10月に行われた座談会における発言の要点です:

神川:
満蒙には三つの問題がある

1 満蒙を日本が得たのは自力によったのではない。英米の協力があった。英米の帝国主義の延長線にある満蒙に英米からのけん制があるのは当然

2 支那の民族自決主義が満州にも及んできた。日本が帝国主義的な政策を固守するなら日本・支那の武力衝突は免れない

3 アメリカの金融資本は支那・満州が日本のみの縄張りになることを許さない

日本が満州の権益を手放さないという姿勢を続けるなら大動乱になる。日支が対立することはロシア、アメリカの思う壺である


神川彦松=東京帝国大学助教授法学博士


神川の話は同席していた次の人たちによって否定されます。このほかに二人の出席者がいますがさしたる発言はしていません。神川の側にたったひとはゼロでした

佐藤安之助=前代議士陸軍少将
建川美次=参謀本部第一部長陸軍少将
森恪=政友会代議士
中野正剛=民政党代議士


神川が話し終わるとこんな調子で冷笑されます:

佐藤:こういう反対論が出て来て面白いんだ、どうだね。
建川:いろいろの説もあるものだね。


このあとに森、中野が加わってそれぞれが詭弁をもって神川論を葬る集団暴行的な光景が繰り広げられていきますが、長くなるので省きます


神川の論を掘り下げようという知的関心、ひらたくいえば実存的なシツコサがその人たちには欠けていました。ながながと座談が続きますが、底流にあるのは問答無用の姿勢ですから思考がない無意味な時間つぶしです

勿体無いことですね。神川論をもとにシミュレーションを作り上げたうえで、さてどちらを選ぶかを考えるというさして時間のかからない作業があったのならまだ諦めもつくのですが、それを省略したまま「満州死守」「戦線拡大やむなし」という妄想にこもったヒッキーオジンの群れによって日本は十五年戦争へとのめりこんでいく


あの頃と同じ景色がコイズミあたりから復活してどんどん鮮やかになっているいまの日本。赤頭巾ちゃん気をつけてね。と書いてオノマの責任は完了ですよおん


原文はいずれも「文藝春秋にみる昭和史 第一巻」にあります

なお、岐路にあって冷静だった人もいます。そういう例を見たい方は石橋湛山の著作を読まれたらいいと思います。文庫本にもなっています


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