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原稿・ 林雨 第三十四回 「ビルマの花」ふたたび 
林雨 第三十四回  「ビルマの花」ふたたび  小野冬生http://www.japancanadajournal.com/

一年前の「林雨」で「ビルマの花」という本を紹介しました:

戦記を読むと「殺伐」とか「悲惨」とかいうものがストレートに伝わってくるのが多いのですが、「ビルマの花 戦場の父からの手紙」(福田恵子著・みすず書房・1988年8月発行)に収められた娘・恵子にあてた秋葉昂(あきばこう)中尉が送りつづけた手紙にはのぼのとした風景がたくさんあります。

さいごの数通以外はすべて色鉛筆で描いた鳥、花、山、船、子どもなどの絵がついていて、秋葉昂というひとの精神性や良き庶民のくらしぶりが伝わってきます。

戦争あるいは政治について語りたいというひとには読んでおいて欲しい本ではあるのです。


「ビルマの花」についてはブログにも書いていたのですが、一年ちかくたってから思わぬ方からコメントを貰いました。コメントへ返事を書き、またコメントを貰うという過程を通じてネット時代におけるヒトのつながりの妙を改めてかみしめるとともに、敗戦から六十三年たつとこういうこともあるのだと感慨にふけったものです。今回はその模様を紹介します。

2008/07/27
はじめまして、昂の孫です。伯母の書いた「ビルマの花」を気まぐれで検索していたら偶然この「木霊の宿る町」に出会いました。祖父(昂)の絵を気に入っていただけた(?)ようで嬉しく思っています。父「肇」にもこのページの存在を知らせたところ、とても喜んでいました。ただひとつ、昂の苗字は「秋葉」ではなく「秋庭」が正解です。

2008/07/28
秋庭昂さんのお孫さんのお目にとまってとても嬉しいです。秋庭さんの絵からは色々な善いものが伝わってきます。ご指摘ありがとうございました。とりいそぎ調べたところ2007年8月の10、11、12、14、16日に書いていて、すべて秋葉になっていました。失礼しました。

2008/07/28 
早々に修正ありがとうございます。来週は昂の命日なので善い話が報告できそうです。「おじいちゃんの絵にファンができたよ」
 
自分の絵を見た人がそれをまねて描いてくれる、というのは描いた本人にとって嬉しいことです。昂も著者の恵子も絵を描くことを楽しんでいました。どうぞ、絵を描くことをどんどん楽しんでください。

2008/07/28 
命日は八月六日、六十四回目でしょうか。

秋庭昂さんが恵子さんの絵を手本にして描いた絵がありますが、描いているあいだ昂さんは恵子さんの生を生きたような気がします。私も鳥の絵を真似したときは秋庭さんの鳥へ寄せる暖かい目を持ち、船の絵では夜光虫を見ている秋庭さんの気持ちが分かるような気がしました。

2008/07/28 
著者の恵子も数年前に他界しましたので、昂については父に聞きながらのお答えになっています。その父(肇)もこのようにお気にかけていただけることを喜んでいます。命日は昭和十九年八月六日とのことです。
 
この時期、昂の住んでいた栃木県足利市では明治三十六年から続く花火大会が開かれ、毎年30万人規模の人々が集まり夜の渡良瀬川河川敷はとても賑やかになります。

2008/07/31 
福田恵子さんが他界されていると知ってボーっとしました。改めてみたところ「ビルマの花」は二十年前に発行された本でした。昂さんも百歳を超えられた・・
      
三十代なかばの肇さんが東北本線の列車の中で偶然に会った人から「お父さんはアキバさんという将校さんじゃないかい?」と訊かれるくだり。さらりと書かれていて、それだけ胸があつくなりました。
 
本には秋庭さんが「渡良瀬川の流れる関東平野を一望の下におさめる小さな山の中腹」に休まれているとあります。花火の見えるところなのだろうか、それとも音だけが聞こえるのだろうかなどと想像しています。

2008/08/06 
渡良瀬川の花火を見てきました。お墓参りもしてきました。「山の中腹」は高く上がった花火がきっと見えるでしょう。音は市内に響き渡るほどの大きさなのでしっかり聞こえたでしょう。
 
何しろそこは山の斜面を切り開いたところで、東南を向いていて、日差しを遮るものが何もなく、じりじりと暑かったです。お茶と小さな饅頭を二つ供えて来ましたが、父に「早めに回収しておいて」と頼んだほどでした。

2008/08/06
「ビルマの花」を読んだあとに残っていた一抹の寂しさが渡良瀬川の花火の音とともに薄れるようです。

以上をもって秋庭さんのお孫さんとのやりとりは終わりましたが、お蔭さまでことしはかつてなく穏やかな気持ちで八月十五日を迎えることができました。
2008・08・16 @ 北バンクーバー

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